これまでに発見された最大のブラックホールは、太陽の360億倍の質量を持ちます。これは宇宙論モデルが予測する上限付近に存在するため、天文学者たちはブラックホールとその母銀河の関係について、喫緊の課題を抱えています。
8月7日付の王立天文学会月報に掲載された論文で、研究者らは地球から50億光年離れた超大質量銀河の内部にブラックホールを発見したと発表した。このブラックホールは「宇宙馬蹄形」と名付けられている。発表によると、新たに発見されたこの巨大ブラックホールは、天の川銀河の中心にある超大質量ブラックホールの約1万倍の質量を持つという。理論予測では、ブラックホールの質量の上限は太陽の400億倍から500億倍とされているが、この巨大ブラックホールは太陽の360億倍という、計算上の許容範囲に危うく近い値となる。
宇宙馬蹄形の巨大なサイズは時空を目に見えるほど歪ませ、近隣の銀河からの光をアインシュタインリングと呼ばれる馬蹄形の光へと曲げます。この偶然の天体の奇癖と、従来の検出方法によって、天文学者たちはまだ名前の付いていないこの新しいブラックホールを発見することができました。
「これはこれまでに発見されたブラックホールの中でもトップ10に数えられ、おそらく最も質量が大きいブラックホールでしょう」と、研究の共著者でイギリスのポーツマス大学の宇宙学者、トーマス・コレット氏は声明で述べた。「他のブラックホールの質量測定は間接的なものであり、不確実性もかなり大きいため、どれが最大なのかは正確には分かりません。」
天の川銀河を含む、ほとんどの巨大銀河は、その中心に超大質量ブラックホールを宿しているようです。宇宙論モデルは、宇宙馬蹄形銀河のようなより大きな銀河は、さらに巨大な「超大質量」ブラックホールを宿す可能性があると予測していました。しかし、そのような超大質量ブラックホールを発見することは困難でした。なぜなら、ブラックホールの周りの恒星の運動を追跡する従来の方法、すなわち恒星運動学は、遠く離れた休眠中のブラックホールには有効ではなかったからです。
研究者たちは、重力レンズ効果という手法を用いてこの限界を克服しました。この手法は、必ずしも宇宙物体の運動を「見る」ことに依存しません。また、超大型望遠鏡(VLT)とハッブル宇宙望遠鏡の観測データも用いて、銀河の包括的なモデルを作成しました。この二本柱のアプローチにより、研究チームは「その巨大な重力とそれが周囲に及ぼす影響のみに基づいて」休眠中のブラックホールを発見することができたと、ブラジルのリオグランデ・ド・スル連邦大学の博士課程学生で、本研究の筆頭著者であるカルロス・メロ氏は同じ声明の中で説明しています。

「私たちはブラックホールの影響を2つの方法で検出しました」とコレット氏は述べた。「ブラックホールを通過する光の進路を変えていることと、ブラックホールを中心とする銀河の内部にある星々を極めて高速に動かしていることです。この2つの測定を組み合わせることで、ブラックホールが実在することを確信できます。」
「特に興味深いのは、この方法により、宇宙全体に隠れた超大質量ブラックホールの質量を、それらが完全に沈黙しているときでも検出し、測定できる点です」とメロス氏は付け加えた。
宇宙馬蹄形の環境におけるもう一つの注目すべき点は、それが「化石群」であるということです。これらの暗黒で巨大なシステムは主に重力によって駆動されており、通常は一連の銀河合体の最終産物として形成されます。
「伴銀河に元々存在していた超大質量ブラックホールも全て合体して、私たちが検出した超大質量ブラックホールを形成した可能性が高い」とコレット氏は述べた。「つまり、私たちは銀河形成の終焉とブラックホール形成の終焉を目撃しているのだ。」
この新しいブラックホールは明らかに印象的で、天文学者たちが今後どのような発見をするのか楽しみです。また、これはマルチメッセンジャー天文学、つまり同一の天文現象から発せられる異なる種類の信号の協調の素晴らしい実証でもあります。これは、私たちが「研究を終えた」と思われていた現象を再定義する上で不可欠な要素となってきましたが、これが全く新しい発見の基盤となることは期待できます。いずれにせよ、私たちが宇宙の多くの謎の核心に、これまで以上に近づいていることは間違いありません。