廃墟となった温泉街の真ん中に、異世界への扉が開く。このアイデアが、大ヒット作『君の名は。』や『天気の子』などで世界的に知られる新海誠監督の最新作アニメ映画『すずめ』の原動力となっている。
すずめ(原菜乃花)は、いたずら好きな猫に姿を変えるキーストーンを外してしまい、偶然その扉の鍵を開けてしまった。それをきっかけに、彼女は日本中の異次元の扉を封印し、巨大なワームのような怪物が地上に墜落するのを防ぐという使命を帯びる。彼女は、幼い頃に母がすずめのために作ってくれた椅子と魂が融合した青年、颯太に助けられる。
『すずめ』は、新海作品の魅力を多く取り入れながら、ある程度は予測可能ではあるものの、より成熟したストーリーを展開している。美術、特に背景は素晴らしく、映画が伝えようとしている感情のニュアンスは途方もなく印象的で、音楽は壮大な傑作である。すずめが訪れる奇妙な世界――日本の安全のために怪物が保護されている異世界――は、アニメでは友情や愛を優先して軽視されがちな洞察力と自立心をもたらしてくれる。
『すずめ』の最大の強みは、現実世界の設定を見失うことなく、超自然的なメタファーを通して深く人間的な経験を描き出す能力にある。その限界から逃れたいという本能的な欲求以外に動機を持たないこの虫は、制御不能な自然の力である。廃墟や失われた場所から現れ、繋がりの喪失、つまりこれらの場所における人間の活動の不足によって突き動かされているように見える。こうした状況は、虫が象徴する恨み、怒り、そして恐怖の入り口となる。この虫を見ることができる人はごくわずかだが(所詮はメタファーである)、日本の様々な都市や町への影響は、その土地全体に深く感じられる。『天気の子』と同様に、自然災害や天候は超自然的な干渉の結果であるが、この虫が人々の生活を破壊する可能性を理解し、それを守る任務を負っているのは、クローザーと呼ばれる特定の人々だけである。
家族のドラマ、ラブストーリー、死後の世界、いたずら好きな猫の精霊、そして2つの異なる捜索救助ミッション。すずめのペースはやや慌ただしく、時折ゆっくりとした瞬間が訪れる程度だ。しかし、映画が示唆しているように、ワーム(そのワームが何であれ)を止めるために必要な、共同体としての責任感を真に際立たせているのは、こうした通行人とのこうした交流である。すずめの日本中を巡る旅は、まるで彼女が人生で誰もが失った人々の代わりとなったかのような、優しさと理解に満ちた光景で彩られている。登場人物たちは、失った愛する人のために、もうそうする機会を失ったため、すずめを救い、助け、そして助けたいと思うのだ。
すずめの恋愛は…映画全体を通して物足りなさを感じさせる。それは主に、彼女の愛情の対象が文字通りの「物」だからだ。確かに、爽太は気まぐれだが非常にハンサムな大学生で、女子高生が夢中になりそうなタイプだが、すずめが三本脚の椅子に閉じ込められた背もたれにキスをする、という全くの不条理さは他に類を見ない。この映画は、本来なら危険で不快な邪魔者と思われていたであろう恋愛の比喩表現を、単なる繋がりへと矮小化している。他の多くのアニメ映画と同様に、すずめにおいても主人公が他のキャラクターに抱く愛情は動機に過ぎず、映画の本質ではないことを強調している。

すずめは旅を続け、あの世/異界への扉を閉め、ワームの猛威を阻止する。そして、ワームが見えるという稀有な能力は、かつてあの世に行ったことがあるからだと気づく。子供の頃、故郷を津波が襲い、母親を亡くし、すずめ自身も置き去りにされたのだ。彼女は、この氾濫原に戻り、あの時のトラウマから解放されなければならないと悟る。これらのシーンは、信じられないほど感動的で胸を締め付けるものであり、声優陣は、この異界での瞬間を、まさにそれぞれの役柄にふさわしい演技で演じている。この異界のイメージは忘れられがちかもしれないが、物語はこの空間で真に一体となり、記憶のように、未来のように、そして癒しのように、同時に感じられる。
結局のところ、『すずめ』は、提示しようとする神話のスケールの大きさによって足を引っ張られてしまう。すずめという人物、彼女が何者で、何が彼女を突き動かすのかに焦点を当てていることが、この映画の最も魅力的な部分だ。壮麗で壮大な風景、奇妙な幽霊と美しく朽ち果てた都市、そして世界の終焉を賭けた危機の中で、すずめは自らを救い、そして後に自らの癒し、感情、そして愛を最優先にした結果、世界を救うヒロインとして際立っている。
『Suzume』は4月14日に北米で発売予定。
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