ラッキーは最悪の恐怖に立ち向かう、非現実的な悪夢だ

ラッキーは最悪の恐怖に立ち向かう、非現実的な悪夢だ

自己啓発作家メイ(ブレア・グラント)の綿密に練られた人生には、突如として異世界から来たような存在に直面する前から既に亀裂が生じ始めていた。しかし、ラッキーの主人公が知るように、問題に正面から向き合っても解決が保証されるわけではない。

ナターシャ・カーマニ監督(『イミテーション・ガール』)、主演グラント(『ヒーローズ』『ビヨンド・ザ・ゲイツ』)脚本による『ラッキー』は、一見すると『イット・フォローズ』風の超自然スリラー映画のように感じられる。『イット・フォローズ』の止められない恐怖のように、メイを狙う脅威は突如として、謎めいて容赦ない。しかし、メイの置かれた状況は少し異なる。毎晩、不気味なプラスチック製のマスクを被った同じ男が彼女の家に現れ、彼女を殺そうとするのだ。幸いにも、彼は比較的簡単に撃退でき、死後も遺体は消え去り、後に残るのは割れた窓ガラス、粉々に砕けた家財道具、そして時折飛び散る血しぶきだけだ。しかし、毎晩、彼はそこに現れ、殺人パーティーを始めようと準備万端なのだ。

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「え、何?」と不思議に思う人もいるかもしれないが、映画の冒頭で夫のテッド(ドゥルヴ・ウダイ・シン)が状況を簡潔にまとめたとき、メイはまさにそのように反応する。メイがなぜ自分が何度も危険にさらされているのか、最初から覚えていないのか、そしてテッドがメイにその知らせを伝える際になぜあれほど淡々と、そして無視するような態度を取ったのか、その理由は一切説明されない。「もう、命がけで戦わなきゃいけないんだ」と彼は、まるで誰かがゴミ出しに行くように声をかけるような口調で言う。襲撃後、警察が呼ばれ(テッドはメイに毎晩同じ男を見ていると伝えたにもかかわらず、その男は見たことがないと言う)、その後、テッドとメイは大喧嘩になる。テッドは、その男の存在が不必要な不安やヒステリーの原因であることを認めようとしない。「これが現実なんだ!」とテッドは言い放ち、メイを一人にして家を出て行く。

実のところ、メイは一人で物事に立ち向かう達人だ。文字通りだ。彼女の最新の自己啓発本は『Go It Alone(一人でやれ)』というタイトルで、彼女が説く哲学には「冷静さを保つ」「変えられるパターンに集中する」「自分の物語を作り始める」といったフレーズが盛り込まれている。彼女のブログ記事で最も人気のあるものの一つは「生き残るための問題解決」というタイトルだ。しかし、『Go It Alone(一人でやれ)』はエージェントの期待ほど売れていない。さらに、マスク男が現れてからは、最新のサイン会で聴衆(全員女性)に話しかける際に、彼女は動揺し、答えに詰まってしまうほどだった。

画像: シャダー
画像: シャダー

「もう、このゲームのやり方がわからないんです」と、どん底に近づきつつあるメイは告白する。周りのすべてが全く意味をなさなくなってしまった。彼女が電話するたびに警察は来るものの、彼女を襲う常習犯の居場所を突き止めることになると、空虚なジェスチャーしか返してこない。テッドは頑なに行方不明のまま。そして、(男性の)エージェントからは、女性市場をより効率的に活用するために、新刊に流行の「バズワード」をいくつか加える必要があると告げられた。

そして、メイを殺そうとする男がいる。それは、彼女のあらゆる不安やフラストレーション、そして心の奥底にある恐怖を食い物にする、沈黙を守るサイファーだ。彼はメイ自身の罪悪感の顕現なのか?有害な男性からの反発の化身なのか?彼女を実際に殺すのではなく、暴力的に挑発することが真の目的のブギーマンなのか?メイが別の次元に渡り、男性が何の罰も受けずに女性を何度も襲える場所へと迷い込んだことを示唆しているのか?

ネタバレはさておき、最後の疑問は、『ラッキー』がメイだけに焦点を絞り込むのではなく、生死をかけた闘いを続ける一人の女性以上の物語へと展開していく中で、大きく関わってくる。映画のタイトルは実に巧みに選ばれた。「ラッキー」という言葉は、台詞の中で何度も繰り返される。様々な人物が口にする言葉だが、常に同じ文脈で、メイに彼女がいかに幸運であるかを思い出させる。「また一緒に本を書こうと言ってくれるなんて、本当にラッキーね」とエージェントは言う。「殺人鬼に捕まる前に目が覚めてラッキーね」と警官は言う。「怪我をしなくてラッキーね」と皆が言う。ある時点で、彼女はもう耐えられなくなる。自分を殺そうとする男がいて、彼女は24時間ごとに必死にその男を殺さなければならない。一体全体、彼女はどうして幸運なのだろうか?「私はラッキーじゃない」と彼女はエージェントに告げる。彼女の成功の理由が正しく伝えられていることを確認したいのだ。しかし、それは彼女のサバイバル戦略にも当てはまる。 「私はとにかく一生懸命働くんです。」

わずか 80 分の『ラッキー』は、過剰な説明の必要を感じさせないコンパクトなミステリーであり、その謎めいた物語のポイントは、2 つの重要な要素によって支えられている。1 つは、激しい肉体的な戦闘も組み込まれたグラントの力強くも控えめな演技、もう 1 つは、メイの世界 (恐怖が極限まで高まっているとはいえ、私たちの世界と不快なほど似ている場所) で物事が完全に奇妙になっていく中でも、着実にサスペンスと緊張を高めていくカーマニの確かな演出である。

『ラッキー』は3月4日にShudderで初公開される。

https://gizmodo.com/all-the-sci-fi-fantasy-and-horror-films-to-look-forwa-1846019245


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