『ダーク・グラス』は、あなたが待ち望んでいたダリオ・アルジェントの華々しいカムバックとは程遠い

『ダーク・グラス』は、あなたが待ち望んでいたダリオ・アルジェントの華々しいカムバックとは程遠い

イタリアのホラー界の巨匠ダリオ・アルジェント(『サスペリア』『ディープ・レッド』『インフェルノ』『テネブレ』『フェノミナ』『オペラ』)のファンは、9月に82歳になったベテラン映画監督が、もう1本傑作を世に送り出してくれるのではないかと長年期待してきた。『ダーク・グラス』は2009年の『ジャッロ』といった近年の作品よりはるかに優れているものの、残念ながら彼の古典作品には及ばない。

それでも、劇場公開とShudderでのストリーミング配信の両方で公開される『ダーク・グラス』は、ベテランのアルジェントファンが興味を持つ作品であり、それには十分な理由がある。これはアルジェントにとって10年ぶりの長編映画であり、彼の娘であり、しばしば共同作業を行っているアーシア・アルジェントが脇役として出演しているからだ。超自然的な要素はなく、彼のフィルモグラフィにおけるジャッロの側面に当てはまるが、彼がキャリアをスタートさせた『クリスタル・プラマッジの鳥』や『灰色のベルベットの4匹の蠅』のような目もくらむような映像や生々しいミステリーはない。表面上はスリラーである『ダーク・グラス』は、サスペンス性はかなり低い。そのプロットで最も衝撃的なのは、その直線的な展開で、アルジェント作品にしばしば見られる楽しい予測不可能性を損なうものとなっている。音楽は頻繁に押し付けがましいが、これもアルジェント監督の愛すべきトレードマークである。しかし、アルノー・レボティーニの作品は、『サスペリア』のような映画を文字通り悪夢の中で起こっているかのような物語に高めたゴブリンの電子サウンドトラックほど神経を逆なでするものではない。

画像: Shudder/IFC ミッドナイト
画像: Shudder/IFC ミッドナイト

とはいえ、ダイアナ(イレーニア・パストレッリ)が体験する世界は悪夢のようで、例えば『サスペリア』の魔女のバレエ学校のような地獄よりはずっと現実的だ。ダイアナの人生が暗闇へと変貌していくという、非常に率直な警告が、彼女が日食を見つめて危うく目を怪我する最初のシーンで示される。それから間もなく、彼女はひどい交通事故に遭い、失明する。ローマ中のコールガールを狙う狂人にストーカーされている状況を考えると、これは特に悲劇的な展開だ(「神の罰よ」とダイアナの家政婦は呟き、ダイアナは激怒して彼女を解雇する直前に呟く)。さらに、この事故には他にも被害者がおり、その中には幼いチン(シンユー・チャン)も含まれる。チンは最初はダイアナを責めるが、孤児院に閉じ込められるよりは彼女と一緒に過ごしたいと考えるようになる。ダイアナを支える仲間には、丈夫な盲導犬のほか、ダイアナが新しい現実に適応するのを手助けする親切な在宅介護士のリタ(アーシア・アルジェント)もいる。

『ダーク・グラス』に登場する警官キャラクターの一部が殺人犯の身元を特定しようと奔走する様子(観客は容易に犯人を特定できるだろう)、そして他の登場人物が逃走中のチンを見つけようと奔走する様子を通して、この映画はダイアナの混乱を巧みに捉えようとしている。彼女が極めて脆弱であることは明らかであり、『ダーク・グラス』が多くのシーンをほぼ暗闇の中で撮影することでその状況を伝えようとしたのも当然だろう。もし物語が、ほとんどが逃げ回り叫び声をあげるシーンではなく、サプライズや暴露シーンのある最終幕へと繋がっていたら、より苛立たしい状況になっていただろう。

画像: Shudder/IFC ミッドナイト
画像: Shudder/IFC ミッドナイト

アルジェント監督のトレードマークである、色彩豊かで鮮やかな映像美と、胸が締め付けられるほどゴージャスなスタイルを味わいたいなら、本作はそうではありません。実際、アルジェント作品の満足度の高い鑑賞体験を求めているなら、本作は絶対におすすめできません。監督を初めて知る人にとって、『ダーク・グラス』は絶対に彼の作品に触れるべき作品ではありません。率直に言って、この映画はもっとひどい出来だったかもしれません(例:2012年の耐え難い『ドラキュラ 3D』)。しかし、アルジェント監督のファンなら、もっと良い作品にもなり得たことを知っているはずです。

『Dark Glasses』は現在一部の劇場で上映中で、10月14日には上映劇場が拡大される。Shudderでは本日10月13日に配信開始。また、偶然にもShudderのライブラリーにはアルジェント監督作品が多数収録されており、『Opera』と『The Stendhal Syndrome』に加え、『Deep Red』、『Tenebrae』、『Inferno』、『Phenomena』、『Trauma』、『The Cat o' Nine Tales』、そして彼が共同脚本を務めたが監督はしていない2作品、『Demons』と『Demons 2』が新たに追加された。


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